本馬は当歳時に鼠径ヘルニアを患い、治療のため去勢手術を余儀なくされた。そのため、この時期の1歳募集馬としては珍しい騙馬だが、気性面に起因しての事ではないのは冒頭にお伝えしたい。
　ヒーロー17について「生まれた時から骨量と筋肉量に恵まれ、ゆったりしたつくりの大型馬で、冬場の昼夜放牧を経て、逞しさが身についてきました」と話すのは谷川牧場代表の谷川貴英さん。1歳6月時点の馬体重は426キロ。大きく張り出した肩と大腿骨の周りにはたっぷりと筋肉が備わり、厳寒期も休まず続けられた昼夜放牧の効果で、無駄肉が少ないシャープなシルエットの身体つき。既に競走馬としての雰囲気を醸し出し始めている。冒頭で言及した去勢についても「去勢をするとホルモンの関係で年齢を重ねても筋肉の若々しさを保たれて、長く競馬を使えると言います。本馬もぜひ長く楽しめる馬になって欲しいね」と谷川さんは前向きだ。
　マカヒキやサトノダイヤモンドらの母と同じく、パドックシアトルは南米アルゼンチンの活躍牝馬。ダート中距離の重賞を2勝し、亜牝馬3冠のGⅠセレクシオンデポトランカス大賞（ダート2000m）で3着、オークスにあたるGⅠセレクシオン大賞（ダート2000m）で4着など世代トップクラスの実績を残した。母として谷川牧場へ導入され、昨年のセレクションセールで3番仔が5720万円（税込）で落札されている。本馬は母の第4仔だ。
　父は2022、24年のNAR2歳チャンピオンサイアー、そして24年のダート総合（JRA＋NAR）最多勝種牡馬のホッコータルマエ。「母親の特性を考えて、種馬を選びました。所謂“似たもの同士の配合”ですが、思い描いていた通りの体型に生まれてくれて、本馬の出来が良かったので2年連続でホッコータルマエを配合したほどです」と谷川さん。中でも「力強い背中のラインが好き」と白い歯を見せて、言葉に力を込めた。