「この馬は、もしかしたらと思っているんです」と中島牧場代表の中島雅春さんが密かに期待する1頭だ。母は、繁殖牝馬としての評価が急上昇中のターフマジョリックの全妹。ウオッカやダイワスカーレットと同じ世代に生まれ、2歳夏に3馬身差で逃げ切って初勝利。オープンの福島2歳Sでは追い込んで3着だったものの、自己条件に戻ったつわぶき賞ではゼットカークのハナを叩いて堂々の逃げ切り勝ちを収めた快速馬だった。逃げ差し自在。父タイキシャトル譲りのスピードとセンスが光る1頭だった。
　そのエミネンツァベルタの初年度に選ばれたのは、中島さん自身が「好きな馬」と公言して憚らないホワイトマズル。受胎率にやや問題を残すものの産駒の走りには定評がある種牡馬で、同牧場生産のホワイトマズル産駒には現役のトロワプレジールのほかニシオセーラム（JRA6勝、福島民友C勝ち）などがいる。
　「どんな馬でもそうですが、最初の仔は心配なことが多いものです。この馬も生まれたときは少し小さかったのですが、今ではそんなことを忘れてしまうくらいに成長しました。重心が低く、牝馬らしい腹袋のあるタイプ。満足しています」と、本馬を語る際の中島さんの表情はとても明るい。
　母エミネンツァベルタは桜花賞の最終登録までこぎつけたが、残念ながら出走は叶わなかった。その時の調教ゼッケンは今でも中島牧場に大切に保管されているそうだ。「この馬にはお母さんのエミネンツァベルタが出走を果たせなかった桜花賞の舞台を踏ませたい。それくらいの馬だと思っています」と力を込めた。