夏の気配を帯び始めた陽光降り注ぐ放牧地の真ん中で悠然と立つ、ひときわ大柄で筋骨逞しいドラフト5。
　「母の脚のことがあるので負担の掛からないように身体の大きくないダノンレジェンドを選んだのですけどね。生まれ落ちは小さくて、そこは狙い通りでしたけど、その後はグングンと成長して、正直、想像の『上』を行く素晴らしい馬体に育ってくれています」と、ナカノファーム代表・中野将大さんが目を細めながら満足気に大きく頷く。
　ドラフト5は、当歳時から骨格の確かさと、初仔らしからぬ恵まれた馬格が目立っていたが、ひと冬を越して、さらに圧倒的な骨量と筋肉量を備えた迫力の馬体へ成長を遂げた。腹周りには十分に幅が備わり、上体を支える四肢のつくりも強靭で力強い。放牧地で見せる恵まれた馬体を存分に使って走る姿は躍動感と力強さに溢れ、他馬を弾き飛ばしながら真っ直ぐ進む。そして、その機敏な動きからはスピード勝負にも対応できる運動能力の持ち主であることが窺える。
　「自分が牧場を継いだ理由の一つに、学生の頃に見て感動したクロッサンドラのような馬を自分でも生産したいという事があります。そしてナリッシュはその可能性を感じさせてくれた馬でした。携わっていただいた全ての関係者の方々、そして暖かく見守ってくれた会員様のお陰で牧場へ戻ってこれましたが、競走馬としてのナリッシュはデビュー2戦目でアクシデントに見舞われてしまい、期待に応えることが出来ませんでした。だからこそ、この仔で恩返しをしたいという気持ちは強いです」と中野さん。
　クロッサンドラから大事に紡いで繋いできた血脈。特にナリッシュは、当初は絶望的にも思えた大怪我からの生還を果たして命を繋ぎ、そして今回その初仔がクラブへ送り届けられた。血と想いを受け継いだドラフト5が蹄跡を刻み始める。
【1歳6月上旬時点測尺】体高157cm／胸囲179cm／管囲20.7cm