「5月の放牧中に鹿に驚いて右前脚の内側を外傷してしまい、治療のため1～2週間ほど舎飼にした影響で、DVDでは少し身体が縮んだ姿になっています。傷そのものは全く心配ないですが、舎飼前の馬体が素晴らしかっただけに、出来ればそれを会員様に見てほしかったです」と悔しそうに話す谷川牧場代表の谷川貴英さんだが、目の前に曳いて現れたアプローズ6からは“出来落ちの最中”という事実は見受けられない。
　当歳時より皮膚の薄さと、逞しいクビ付きがひと際目立ち、柔らか味のある歩様が特徴的だったアプローズ6。その長所は消えることなく、骨量豊かで狂いのない骨格と、張りのある筋肉質な馬体を誇示するかのように、凛と立っている。理想的な傾斜角の肩関節は可動域の広さをもたらし、前肢の出はスムーズ。伸びやかな背中は収縮性に富み、スナップの効いた軽快なフットワークを放牧地で見せている。
　なお、本馬は1歳3月に両トモ飛節に出来たOCD（離断性骨軟骨炎／若馬に多く見られる関節面の軟骨の一部が剥がれている状態）除去手術を行っているが、手術は1時間で終わる簡単なもの。競走能力に影響はなく、実際、放牧再開後、影響が感じられたことは一度もなく放牧地を元気に駆け回り、その運動量は平均以上だ。早期に対処したお陰で、今秋には遅滞なく育成プログラムに入ることが出来るだろう。
　「会員様に迷惑を掛けたくはないですからね。クラブゆかりの血統で、皆様が待ってらっしゃるというのが分かるだけに、余計に自信を持って提供できるレベルの仔しか出せないと思っています」と谷川さん。真剣な表情で、まっすぐ本馬を見つめながら、言葉を結んだ。
【1歳5月末時点測尺　体高155cm/胸囲168cm/管囲19.9cm】