「放牧地に青草がつきはじめてから、徐々に身体つきが変わってきました。つれて力もついてきて、もう私では敵いませんよ」と苦笑しながら教えてくれたのは、大滝康晴牧場代表の大滝康晴さん。
　早速、目の前に曳かれて姿を現したアプローズ11は、芯の強さとバネを感じさせた当歳時の印象に加えて、上体に厚みが加わった。特にクビ差しから肩にかけての前駆のつくりが逞しくなり、父タイムパラドックスと雰囲気が似てきた印象。全体的には、まだ成長の余地を多く残す身体つきだが、膝下が短く、やや詰まり気味の重心の低い体型で、放牧地では直進性に富んだ推進力を見せている。気性面は悍性が強く勝気で、自分よりも大きな馬にも平然と向かって行き、そして蹴散らす。この悍性だからこそ発揮される俊敏性がまた頼もしく、上の兄2頭とは体型が違うが、気持ちの強さはその兄たちより上と大滝さん。楽しみを持って南関東の深い砂コースへ送り出せる素材だろう。
　母アリオーンは、タイムパラドックスの代表産駒の2頭であるソルテとトウケイタイガーの半姉。今年3月の阪神競馬では、その初仔クリスエステソーロがデビュー3戦目で初勝利を挙げて、いきなりJRA勝馬を送り出した。前述の2頭によって父タイムパラドックスと牝系の相性の良さは証明済。となれば期待は自然と高まるというものだ。
　「牡馬と牝馬の違いもありますし、競走馬としても上2頭とはタイプも異なると思いますが、1歳春先の上昇度に限って言えば、こちらも負けていません。とにかくよく動き回って運動量が凄く、体力があります。たぶん、競走馬としても気で走るタイプになると思うので、マイル以下の距離が良いかもしれませんね」と大滝さん。膨らむ期待と共に生産馬を送り出した。
【1歳5月末時点測尺　体高150cm/胸囲177cm/管囲18.5cm】