2015年の種付けシーズンに最もその血が求められた『龍王』の初年度産駒が、期待通りの成長を見せている。
　「ひと冬を越してしっかりと上背が出てきて、満足いく成長過程です」と、すっかり逞しくなった募集本馬ビクター1を見て、矢沼ステーブル代表の矢沼浩二さんも目を細める。
　父ロードカナロアは、海外GⅠ・香港スプリント2連覇を含むGⅠ6勝馬。ラストランとなった2013年の香港スプリントでは、世界の快速自慢を相手に直線だけで5馬身突き放す離れ業を演じてみせた。種牡馬としてもキングマンボ～キングカメハメハのサイアーラインを継ぐ存在として、大きな期待を集めている。
　ビクター1は、生まれ故郷の高橋義浩牧場分場から、中期育成を行うため4月に日高町の奥山牧場育成センターへ移動した。海から近い高橋義浩牧場分場は海風が強いため冬の間は長い冬毛に身体が覆われていたが、気温の上昇と共に毛が抜けて、いかにも新陳代謝が良さそうな薄い皮膚が現れた。張りがあって容量の大きなトモとどっしりとした胴回り、短めながら強靭さを感じさせる背中。そしてスプリンターの特徴を集めたその好馬体を質感良い皮膚が覆う。頭部は小さく表情は精悍。放牧地では活発に駆け回り、四肢の回転の速さと瞬発力、そして重心のグッと下がった矢のような加速感こそが本馬の真骨頂だ。
　「スピードを武器に短距離で活躍するタイプになるでしょう。1歳の夏中には本州へ移動させて、次は矢沼ステーブルの出番です。厩舎へ最高の状態でバトンタッチ出来るように、しっかりと鍛えたいと思います」と矢沼さん。育成者として腕を撫すその姿は頼もしさに溢れていた。
【1歳5月下旬時点測尺　体高152cm/胸囲170cm/管囲19.0cm】